あひるの仔に天使の羽根を


「素人女相手に、何もたついてるんだよ!!?」



私は怒鳴りながら、その手を強引に引っ張れば、巨体がぽんと飛び出してきて。



まるで巨大な大根…いや、ニンジン堀りのようだ。



「お前の動きがマジ素早すぎなんだって!!!」



「プロの自覚しろ!!! 言い訳するな!!! 

それともてめえ、詐欺師にでも転職するか、ああ!!?」 




返せ。



少しでも、劣等感を感じたあの時間を返せ!!!




「はあ!? 何で詐欺師!!?」




「いいから、早く動けッッ!!!」




苛々が募った私は――



煌の襟首を乱暴に掴んで、夢中で走った。




嫌だ。




こんな男が兄弟子なんて、絶対に。



こんな手のかかる男に敬意なんて払いたくない。




じゃあ見捨てておけばいいのにそれが出来ない私は、


もしかすると…煌以上に愚かしい存在なのかも知れない。



< 1,170 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop