あひるの仔に天使の羽根を

・儀式

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須臾の予告通り、判りやすい騒音が鳴り響いたと思いきや…賑やかな人の気配。


玄関の扉開いて、こっそり由香ちゃんと外を見てみれば…


各務の敷地内に…敷地外の"女"が溢れかえっていて。


貧民窟女や一般女や修道女や…もうごっちゃまぜ。


儀式だ祭りだと、何やら盛り上がっている。


思わず由香ちゃんと顔を見合わせてしまった。


自由に行き来出来る夜は、まだまだ先だというのに。


嬉しそうで楽しそうで、幸せそうなのはいいけれど。


祭り好きの女の方ばかりでも構わないのだけれど。


突然……何だかおかしい。


今までの緊張感から解き放たれたかのような、妙な幸福感が漂い…感情が豊かで。


そして、耳についたのは見知らぬ女の言葉。


「"禁断の果実"、今回は絶対食べたいわね」


――その"禁断の果実"は13年ごと祭の時にか各務家からお披露目されず、その日だけはどんな身分の者達も無礼講となり、運がよければ口にすることが出来るそうです。


これから…櫂が"食"に関わる怪しげな儀式が始まる。


――"生き神様"を食らって新たな"生き神様"として巫子と生きるか。"生き神様"に食らわれて、"生き神様"の中で巫子と生きるか


それと妙にリンクしてしまったのか、怪しげな響きしか感じ取れない。


怪しいというよりは、おぞましい。


そして現れたのは、黄色い神父達。


考え直して逃げてもいいように言っていた癖、須臾はどうしてもあたし見せ付けたいらしい。


須臾と櫂の永遠を。


櫂が戻った戻らないなんて、お構いなく。


あくまで、彼女の信じる永遠は不変の真実で。


だからこそ、否定したいあたしと櫂の絆。


そう、永遠という真実が1つしかないのなら、どちらかが虚偽だということになるから。



あたしだって引けない。
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