あひるの仔に天使の羽根を

――この地における"男"の扱いは最悪です。"男"は女を惑わす"蛇"として忌み嫌われ、女だけの街から隔離され、神父になるかの選択を迫られます。


――"深淵(ビュトス)"という処に連行されるという噂は訊いたことがありますが、それがどんなものかは判りません



神父になるか"殺される"か。


神父となって女に従属するか、死して自由となるか。



あたしが男だったら、どちら選ぶだろう。



そんなことを思いながら黄色い神父達と歩くと…目の前に塔が見えて。


確かに判りやすい。


ここが…"深淵(ビュトス)"の塔。


あたしが司狼に連れられ、地下では"生き神様"に遭った、胡散臭い場所に…塔。


蒼生ちゃんから聞いている。


土地がひっくり返ると。



恐らく鏡の地面も塔も、急に出来たものではなく…今まで反対側に存在していたというのか、こんなものが。


それなりに、地形が変化する兆候はあったはず。


それがあの…多分がんがん頭に鳴り響いた狂った鐘の音と導かれて、最終進化とばかり、地面だけがぐるりと反転してしまったのか。


しかし地上の人間はそのままだというのに。


重力という問題を無視して、反転を実現可能にしたのは、レグの研究した"重力子"というもののおかげなのだろうか。


しかし何故このタイミングで行われたんだろう?

魔方陣破壊が全て成されたのだとしたら…この反転もレグの思惑の1つだとしたら、これから何が起こるのだろうか。



"邪悪の樹"


あたしにはその意味がよく判らない。


結局、魔方陣破壊が達成できたか否か…由香ちゃんに連絡は無かった。


達成してもしなくても…櫂はいない。


だけどそれは徒労にならないと、櫂は笑っているのなら。


あたしだって頑張ろう。



あたしが今、心を馳せるべきものは、櫂のこと。


皆だって奔走したんだ。


あたしだって、力になりたい。

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