あひるの仔に天使の羽根を
 
そして間髪いれずに、左の襖が開いて。


「櫂!!!」



正装だという黒い服を着たままの櫂が現れて。


駆けつけようとしたあたしは、神楽に近づいた途端、目に見えぬ壁にあたったかのような衝撃に、後方に尻餅をついた。


行けない!!?


結界!!?


見えぬ壁らしきものをどんどん叩いてみたけれど、やはり障壁があって。


あたしは…神楽の中枢には近づけない。



須臾はそんなあたしを、高台から見下すように見ていて。


櫂は静かに首を振る。


"そこで見てろ"


「馬鹿言わないでよ、あたし何でここに来たのよ!!?」


黙ってなんていられないから、来たんじゃない。


助けたいから!!!


櫂を、櫂を、櫂を!!!


だけど櫂は――

あたしの声は届いていないかのように、冷ややかな面持ちのまま須臾を見ていて。


少なくとも、須臾に蕩けきっていたあの表情でないだけ、少しほっとする。


ふと気づけば。


櫂の両手首と両足首に、黒い枷がある。


櫂の両手はまるで手錠のように胸の処で拘束され、足は片足毎に物々しい…アンクレット。


まるで罪人のような扱いに、あたしは悔しくて歯軋りして須臾を睨み付けた。


枷を構成する黒い材質は。


ここの外壁のような…奇妙な模様をしていて。



多分……。



櫂は、紫堂の力を抑えられているのではないだろうか。



それは直感だけど、そう思った。


櫂の顔が…厳しいものだったから。


だとしたら、櫂は自力で逃げれないの?


無論、外側からは結界に阻まれている。


じゃあどあするの?


ねえ、櫂の"秘策"は今も有効!!?



< 1,176 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop