あひるの仔に天使の羽根を
そして間髪いれずに、左の襖が開いて。
「櫂!!!」
正装だという黒い服を着たままの櫂が現れて。
駆けつけようとしたあたしは、神楽に近づいた途端、目に見えぬ壁にあたったかのような衝撃に、後方に尻餅をついた。
行けない!!?
結界!!?
見えぬ壁らしきものをどんどん叩いてみたけれど、やはり障壁があって。
あたしは…神楽の中枢には近づけない。
須臾はそんなあたしを、高台から見下すように見ていて。
櫂は静かに首を振る。
"そこで見てろ"
「馬鹿言わないでよ、あたし何でここに来たのよ!!?」
黙ってなんていられないから、来たんじゃない。
助けたいから!!!
櫂を、櫂を、櫂を!!!
だけど櫂は――
あたしの声は届いていないかのように、冷ややかな面持ちのまま須臾を見ていて。
少なくとも、須臾に蕩けきっていたあの表情でないだけ、少しほっとする。
ふと気づけば。
櫂の両手首と両足首に、黒い枷がある。
櫂の両手はまるで手錠のように胸の処で拘束され、足は片足毎に物々しい…アンクレット。
まるで罪人のような扱いに、あたしは悔しくて歯軋りして須臾を睨み付けた。
枷を構成する黒い材質は。
ここの外壁のような…奇妙な模様をしていて。
多分……。
櫂は、紫堂の力を抑えられているのではないだろうか。
それは直感だけど、そう思った。
櫂の顔が…厳しいものだったから。
だとしたら、櫂は自力で逃げれないの?
無論、外側からは結界に阻まれている。
じゃあどあするの?
ねえ、櫂の"秘策"は今も有効!!?