あひるの仔に天使の羽根を
気持ち悪い、B級ホラー怪物(クリーチャー)だ。
作り物だと思えば笑い飛ばせるかも知れないが、これは紛れもない現実で。
あたしの思考を超えた先にいる、未知なる生物を前に…あたしの本能そのものが震え上がった。
全身が鳥肌立ち、笑いたくもない笑いがこみ上げてきて。
あたしは必死に震える手首を片手で押さえて、深呼吸をした。
落ち着け、取り乱すな。
須臾に…足下を掬われる。
櫂は――
こんな時でも平然としている。
ポン、ポン。
何処からか太鼓の音がして。
それに乗るような横笛の音。
そして須臾は――
腰に挿していた、真っ赤な扇子を拡げると、ぱたぱたと仰ぐように…"生き神様"の周りで舞い始めた。
巫女だから、神楽舞なのかも知れない。
それは幻想的で、美しいものだったけれど。
美しさに固執する須臾が、取り乱すことなく"生き神様"の舞を出てきているということが信じられなくて。
そんな時、ぴくりと反応した櫂の目が、静かにゆっくり細められた。
櫂が…動く?
あたしが期待すると同時に、須臾の舞が終わったようで、"生き神様"に平伏した須臾の凛とした声が聞こえた。
「掛けまくも畏(かし)こき"生き神様"に申し上げます。
我、永遠の契りをきし者を、"生き神様"の下僕となされますよう」
下僕!!?
「只今より、儀式を執り行いますことを……」
「待て」
櫂が――
立った。