あひるの仔に天使の羽根を
「紫堂様。儀式の邪魔はなされませぬよう…」
荏原さんが固い顔をして、櫂を窘(たしな)めた。
「要は…選べばいいのだろう?
俺がその"生き神様"とやらに喰われるか、俺が"生き神様"を喰うか。
巫子の依童(よりわら)として」
こんな時でも櫂は櫂で。
不敵な様にあたしは安心する。
「ふふふ。拒絶はさせないわ。判っているでしょう、芹霞さんがどうなるか」
須臾までも不敵に笑い、あたしを指差す。
あたしは――
「櫂、あたしはいいから。そんなことで須臾との永遠みせられるなら、それならいっそのこと……」
しかし櫂はあたしの言葉に何も反応せず。
「その前に…本当にお前が、"生き神様"の"聖痕(スティグマ)の巫子"だという証拠を見せて貰いたい」
「え?」
さすがに須臾も、櫂の申し出に面食らったようで。
「俺だってただでこの身をくれてやるわけにはいかない。お前が本当に巫子だという証拠を見せてみろ」
くつくつ。
櫂は嘲るように嗤いだして。
気分を害したのだろう須臾は立ち上がると、
「力を見せればいいのかしら?」
得意げな顔で言い放つ。
「そんなもの…巫子の確固たる証拠にはならん。
"聖痕"を見せてみろ、"聖痕(スティグマ)の巫子"」