あひるの仔に天使の羽根を
まだまだ、俺への愛は"美"には敵わぬらしい。
まるで人事のように、そんな愛や美など…どうでもよく考える俺は…非情なのか。
少しでも、情を交わして愛を囁いた相手に、ここまで冷酷になれる俺は、心が冷え切った男なのか。
だけど。
俺の中には芹霞しか居ないんだ。
お前に恋愛感情で欲されたくて、結果今の俺についてきたのが、須臾が執着した"美"だというのなら、元よりそれはお門違い。
昔も今も、他の女など入る隙間がない。
俺の全ては芹霞の為にある。
紫堂における立ち位置も、お前を守るものだから。
毛色が違う惰弱な俺が、紫堂に馴染むまでの時間…どんなに大変で辛いものだったのかなんて、今更訴えるつもりも自慢する気もないけれど。
判って欲しいのは、俺の決意。
あの頃の俺の全てを投げ捨てても、芹霞を手に入れたいと思った"男"の心。
長い間、俺はずっとずっと想い続けてきたんだ。
その俺の想いを…俺の矜持を、一瞬にして穢したのは須臾。
俺の想いは利用された。
そして気づけば、芹霞は玲と恋人同士で。
形式だろうがなんだろうが、短期だろうが長期だろうが、玲が本気な限りは同じこと。
芹霞は俺が戻っても尚、玲の愛を拒まなかった。
その現実がやりきれない。
芹霞の隣に立つ男は俺ではなくて。
芹霞は俺以外を隣に立たせて。
俺は――。
どうしてそんな時に俺は!!!
深い悲しみと同時に湧き上がる…不甲斐ない自分に対する強い苛立ちに、荒れ狂う衝動を止められない。