あひるの仔に天使の羽根を
「お兄様、何故!?」
須臾の叫びを無視して、久遠は呆然としている芹霞の腕を掴んで神楽に乗り込み、
「久遠様、お止め下さい!!!」
制する荏原に久遠は、妖麗な顔で薄く笑い。
「いつから、"若"って呼ばなくなったんだい、荏原」
そして須臾の後頭部を鷲掴みにした。
「何を!!?」
須臾が激しい抗議の眼差しで、瑠璃の瞳をきっと睨みつける。
俺はそこから…何かの力の波動を感じた。
「無駄だよ、須臾。金緑石の使い手は、お前だけじゃない」
久遠の瞳が、瑠璃色から紅紫色へと変わり、
「だって、オレはお前の血を色濃く引いているものな。
なあ…母さん?」
そして久遠は――
「!!!」
須臾を仰け反らせるような、見事なディープキスを仕出かした。
抗うように投げ出される金の簪(かんざし)。
床に投げ打たれる黒い髪。
須臾の腰は砕けていき……久遠の背中に手を回したのは救済を求めたのか、雌の本能からか。
口を開けたまま、何も言えずに呆然としている芹霞の耳元で、
「俺も精進するよ、お前が腰砕けになるまで」
にやりと笑えば、
「ななななななな」
芹霞が真っ赤な顔で飛び上がった。
「……無駄口叩くな紫堂櫂。さっさと始めるぞ」
鋭い声に視線を向ければ、紅い瞳をした久遠。
「く、くく久遠…ねえ、何でそれ…それって」
芹霞はようやく状況に気づいたのか、久遠の格好を見て唇を震わせる。
だけど――その先を言わなかった。