あひるの仔に天使の羽根を

・残骸 煌Side

 煌Side
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「そこまで――


そこの女が必要か、




――…レグ


いや……



"白皇"――?」




レグ="白皇"=荏原。


そんな方程式が成り立つのだと、櫂が飛んでもねえこと言い出した途端、どう見てもご老体の荏原から突如繰り出された拳は――


「させねえッッ!!!」


慌てて走り込んで遮ろうとした……俺の偃月刀で完全に弾き飛ばすには、あまりに威力がありすぎた。


左手で懸命に柄を支えながら、後退しそうになる身体の重心を前に傾け、そして身体を捻ると同時に、斜め上段から大きく蹴りを見舞えば、


くるり。



軽業師のような身軽さで宙で回転して、俺の攻撃を余裕で回避する荏原。


そしてその場から、ふっ…と、瞬く間に消えたかと思うと、


――ガシィッ。


櫂の片腕と、荏原の拳がぶつかり合っていて。


絶対、素人老人の動きじゃねえことは確かだ。



そして櫂が身を翻すように肩を捩って荏原の拳を払いのけ、間髪入れず上げた肘を荏原の喉元に向ける。


完全入ったと思われたその瞬間、荏原の唇が何かを唱えると同時に、指先が怪しげな動いて白い光を放ち始め――


「!!!」


櫂目掛けて放出されたその光に、櫂は咄嗟にその身を後方に大きく仰け反ることで、顔ぎりぎり…紙一重でその力の威力を見過ごした。


白い光は、この部屋唯一の外部との連絡通路である、黒と赤の…怪しげ模様のドアにぶつかると思いきや、まるで吸い込まれるように綺麗に消滅して。




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