あひるの仔に天使の羽根を
何が"だから"なのか判らねえ俺の横で、
「では……"生き神様"は……須臾と実子久遠との間に出来た、子供ですか?」
桜が飛んでもねえことを言い出しやがった。
それが本当なら、近親相姦の末に…こんな化け物が生まれたのか!?
「畸形児なんだよ、こいつは。それを…藤姫によって、暗黒生物に模して育て上げられた。だけど両親の顔は判るらしいな」
あそこで、頭喰ってやがる化け物が、須臾と久遠の……。
人間!!?
「しかし何でまた…母親と…」
「須臾は"美しさ"に執着しているからさ。身近にそんな男が居て、黙っている須臾ではなかったんだろう?」
久遠は答えない。
ただ――
底冷えしそうな瑠璃色の瞳から。
須臾に対して抱いているのは、愛情ではないことを知る。
「あああああああ!!!」
発狂したように叫んだのは須臾。
その声に…白い光が弾け飛んだ。
「か、櫂!!! 須臾の力が…増大してないか!!?」
このままだと、膠着状態の芹霞と須臾の力が…芹霞が須臾に押し切られないのか!!?
窺い見る芹霞は。包み込んでいる黒い光が小刻みに震えだしているようで、益々俺は焦る。
そんな俺の腕を掴んだのは桜で、
「櫂様を信じろ」
その手は、俺の腕に食い込みそうなくらいの力で。
桜がそう、信じ込もうとしているのが判って。
「須臾、思い出せ。お前は何を産んだ?」
残酷までの、揶揄したような…櫂の楽しげな声。
櫂は慌てていない。
だからきっと大丈夫だ。