あひるの仔に天使の羽根を
「嫌嫌嫌ああ!!」
須臾は――
顔の皮膚という皮膚に爪を立てていく。
「醜いのは、嫌!!! 化け物は嫌!!!」
ああ――
「私は私は――!!!
折角母様の"飼育"から解放されたのに、あんなに醜い男に犯されるなんて!!!」
誰のことを言っている?
尚も須臾の狂った独白は続く。
「私は母様の餌じゃない、母様なんて手足喰われて、醜さ晒している化け物なのに…!!!」
俺の脳裏に浮かぶのは、玲や桜と見た…生きた胴体の入った水槽。
だとしたら、母だと呼ぶ須臾も有翼人種だったのか!?
「私は母様より美しいのに、だからあの場から逃げれたのに!!! あの男に、各務のあの男に騙された!! あああああ!!!」
「各務翁の…息子だろう」
櫂が呟いた。
「美しくなければ生きられない。醜ければ母様みたいになる。美しさが欲しい、美しさ…そう私には美しい子供がいたの、久遠と刹那。ふふふふふ」
強姦されて…出来たのが久遠と、
「――刹那?」
櫂の身体がびくりと動いた。
「だけどいなくなっちゃったの、だから産まなくちゃ。言われたんだもの、産め孕め…じゃないと母様みたいになるって。産まなくちゃ…美しい子供産まなくちゃ…」
こいつが美醜に拘るのは…生きる為だというのか?