あひるの仔に天使の羽根を
・剥離 桜Side
桜Side
****************
母親に虐待される子供と
母親に恐怖される子供。
どちらが幸福かとは問えないけれど。
そんな状況を作ったのは、偏に各務翁と…荏原という名を騙る白皇に他ならず。
そしてそんな白皇の魂胆を判っていたらしい久遠は、どんな理由で今まで生きてきたのだろうか。
外見ばかり見ていればその真情は窺い知ることは出来ないけれど、少なくとも芹霞さんに関わる"何か"の代わりに、彼は此の地に縛られているのだろう。
"転写"
櫂様の口からその言葉が漏れた時、私の脳裏に浮かんだのは、芹霞さんを助けに行った時のこと。
確かに致命的な傷を負ったはずの私が、こうして生き長らえている理由。
私の救い手は…緋狭様だけではなかったのか。
おそらく、彼が私に何らかの措置を施したのだろう。
うっすらと…芹霞さんが誰かと言い争っていた記憶がある。
そしていつの間にか、芹霞さんの首から消えた首飾り。
彼女の性格を思うならば、非常事態にならない限り、私達の贈り物を外すことはないし、第一お付き合いをしている玲様が贈ったという金緑石をつけていないことに、玲様が気づかないわけはないだろう。
もし久遠の言霊という力が、媒介を石でも有効にさせるのだとしたら、恐らく芹霞さんは自らの首飾り…金緑石と煌が贈った黒尖晶石は私の為に。
そう思えば――
心が疼く心地がした。
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母親に虐待される子供と
母親に恐怖される子供。
どちらが幸福かとは問えないけれど。
そんな状況を作ったのは、偏に各務翁と…荏原という名を騙る白皇に他ならず。
そしてそんな白皇の魂胆を判っていたらしい久遠は、どんな理由で今まで生きてきたのだろうか。
外見ばかり見ていればその真情は窺い知ることは出来ないけれど、少なくとも芹霞さんに関わる"何か"の代わりに、彼は此の地に縛られているのだろう。
"転写"
櫂様の口からその言葉が漏れた時、私の脳裏に浮かんだのは、芹霞さんを助けに行った時のこと。
確かに致命的な傷を負ったはずの私が、こうして生き長らえている理由。
私の救い手は…緋狭様だけではなかったのか。
おそらく、彼が私に何らかの措置を施したのだろう。
うっすらと…芹霞さんが誰かと言い争っていた記憶がある。
そしていつの間にか、芹霞さんの首から消えた首飾り。
彼女の性格を思うならば、非常事態にならない限り、私達の贈り物を外すことはないし、第一お付き合いをしている玲様が贈ったという金緑石をつけていないことに、玲様が気づかないわけはないだろう。
もし久遠の言霊という力が、媒介を石でも有効にさせるのだとしたら、恐らく芹霞さんは自らの首飾り…金緑石と煌が贈った黒尖晶石は私の為に。
そう思えば――
心が疼く心地がした。