あひるの仔に天使の羽根を
そんな私を塗り替えるかのように、櫂様の声が届いて。
「須臾を見ろ」
須臾は――
"生き神様"…我が子の突起のような手に抱かれ、
「いやだあああ!!!」
我が子は、母親の顔を…紫じみた長い舌でぺろぺろと舐めていて。
悍(おぞま)しいけれども、そこには残虐めいた悪意は感じられなく。
愛情、なんだろう。
だけど、外観から見れば悪夢のような出来事で。
そのうち須臾はケタケタと笑いだす。
私達が手を下すまでもなく――
「ふふふふ。美しい貴方…。ずっと永遠に一緒よ…?」
壊れてしまった。
何て呆気なく――。
力があるなし関わらず……
何て心というものは脆いのか。
もしかして櫂様は、そこを突いたのか。
狂いこそが、弱さの擬態だと…見抜いていたのか。
美に対する狂気は、醜悪な子供によって終焉を迎え…きっともう人間としての判断も何も出来ないだろう。
彼女は、心から美しいと思える存在と永遠に生きる。
それは…不幸?
それとも…幸せ?