あひるの仔に天使の羽根を
久遠は、それを睨み付けるように見て…横を向いた。
「もう須臾には、巫女として振る舞える力がない。
だとすれば、オレは此処までだ」
そして大鎌を手に抱く。
「お前はどうすんだよ!!?」
煌が叫ぶ。
「………。どんな親でも、しでかした罪は子供が贖わないとね。オレにはまだまだやるべきことがある」
それは謎めいた言葉。
「須臾の命が終わればせりも元に戻るさ。もう間もなくだから、下手なことに手を突っ込まないで、さっさと帰れば?」
振り返り様、久遠はまた"あの"眼差しを櫂様に向けた。
憎しみ。
何故憎いのだろう。
何故助けたのだろう。
疑問は湧くけれど、対峙する櫂様が何も言わないのなら、私は黙っているしかない。
「"玲"に感謝しとけよ? あいつがいなければ、オレは来なかった」
「玲ならばやり遂げる。だから連れて貰っただけの話。こんな事態でなければ、誰がお前になど助けを乞うか」
「ふん、言うことだけは一人前だね。本当に気に喰わないよ」
そして去ろうとしたその時、
「さようなら、せり……」
そんな声が漏れ聞こえて。
それが本当に物悲しく思えて…。
そんな時だ。
くつくつとした…白皇の愉快そうな笑い声が覆い被さったのは。
「そのままお帰しすると思いますか、久遠様」