あひるの仔に天使の羽根を
 

ああ何で、櫂様にそんな他人顔を!!?


誰に義理だてている!!?


櫂様なら感じているはずだ。


私は…痛ましい櫂様の顔が見られなくて。



「櫂、出来るよね?」



櫂様は…浮かぬ顔をしたまま、ただ頷いて。


それを見た芹霞さんは微笑んで、宙から降りるように地に足をつけて…白皇の元に歩む。


誰もが制止きれないだけの威圧感が、芹霞さんにはあって。


櫂様までもが呑み込まれて。


「賭けをしましょう、レグ。

櫂が此の地の魔方陣を破壊出来たら…出来ないと信じている貴方の負け。

久遠を解放して、此処から去って」


それは強い語調だった。



「出来なかったら?」



白皇が静かに聞いた。


「あたしが、須臾と…久遠の代わりになる」


「どちらにしても、久遠様を自由にせよと?」


「そう。久遠を犠牲にはさせない」


その言葉はまるで――


「あたしを切り刻むなり、脳を挿げ替えるなり……好きにすればいいわ。貴方の愛しい"あの人"の肉体の一部に使えばいいじゃない」


櫂様を介した時のような強さをもって。


「……成程」


白皇が少し考え込んだ。


「芹霞、お前何を言っている!!?」


声を荒げたのは、櫂様だった。

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