あひるの仔に天使の羽根を
・発作 玲Side
玲Side
****************
――動けなかった。
それでなくとも僕の預かり知らぬ領域を持つ男。
僕をいつも弾いて見せつける12年間という永遠の絆を、瞬時に反故にするように…あの櫂すら擦抜ける芹霞。
その2人が見せる新たな絆。
それは"お試し"だの言って僕が縋り付く、そんな脆弱なものではなくて。
そこにあるのは――
僕が欲しいと思う…どんなことでも揺らがない強い絆を感じ取れて。
何故突然?
どうしてこんな状況になっている?
櫂のように怪しげな術にかかったとか、そういう気配はないんだ。
だとしたら――
芹霞は……!?
僕の心臓は悲鳴を上げていた。
直前までの戦闘が祟ったとかの理由ではない。
イクミが敵として現れたことは、多少は驚いたけれども…それでも司狼と相対してからは、覚悟していたものであって。
そこら辺をあえて、白皇だという男が面白おかしく演出したというのなら、随分と虚仮にされている。
そう思えばこそ。
芹霞に揺れ、心臓を乱す僕を悟られたくなくて。
僕は、僕の矜持の為に虚勢を張るしか無くて。
「慢心は――禁物だ。
思い通りにならないのが、現実なんだよ?」
僕は、顔に笑いの仮面を被る。
そう。白皇さえも知らぬ…愉快な現実を与えられるのなら。
「大体、彼女の力では…僕には敵わないんだ。
僕に対する"恐怖"が彼女の身体に染みこんでいたようで、それも術がとけた要因の1つかもね?」
――私は、白皇の手先などではない。
イクミの正体。
――私の主は、刹那様だけだ。
僕が放ったのは――
「イクミのプレゼントさ」
双月牙。
「まさか…イクミと蓮が同一人物だったとは思わなかったけれど」
――私は、刹那様の命により…お前達を助ける。
途端に曇る白皇の顔。
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――動けなかった。
それでなくとも僕の預かり知らぬ領域を持つ男。
僕をいつも弾いて見せつける12年間という永遠の絆を、瞬時に反故にするように…あの櫂すら擦抜ける芹霞。
その2人が見せる新たな絆。
それは"お試し"だの言って僕が縋り付く、そんな脆弱なものではなくて。
そこにあるのは――
僕が欲しいと思う…どんなことでも揺らがない強い絆を感じ取れて。
何故突然?
どうしてこんな状況になっている?
櫂のように怪しげな術にかかったとか、そういう気配はないんだ。
だとしたら――
芹霞は……!?
僕の心臓は悲鳴を上げていた。
直前までの戦闘が祟ったとかの理由ではない。
イクミが敵として現れたことは、多少は驚いたけれども…それでも司狼と相対してからは、覚悟していたものであって。
そこら辺をあえて、白皇だという男が面白おかしく演出したというのなら、随分と虚仮にされている。
そう思えばこそ。
芹霞に揺れ、心臓を乱す僕を悟られたくなくて。
僕は、僕の矜持の為に虚勢を張るしか無くて。
「慢心は――禁物だ。
思い通りにならないのが、現実なんだよ?」
僕は、顔に笑いの仮面を被る。
そう。白皇さえも知らぬ…愉快な現実を与えられるのなら。
「大体、彼女の力では…僕には敵わないんだ。
僕に対する"恐怖"が彼女の身体に染みこんでいたようで、それも術がとけた要因の1つかもね?」
――私は、白皇の手先などではない。
イクミの正体。
――私の主は、刹那様だけだ。
僕が放ったのは――
「イクミのプレゼントさ」
双月牙。
「まさか…イクミと蓮が同一人物だったとは思わなかったけれど」
――私は、刹那様の命により…お前達を助ける。
途端に曇る白皇の顔。