あひるの仔に天使の羽根を

僕は握った拳に力を入れる。


薄々と…気づいていたのかもしれない。


久遠に寄せるあの時の目をみた時…だからこそ僕は発作をおこしたのかも知れない。


「……櫂は?」


そういえば、この塔の螺旋階段で横たわっているのは僕しかなくて。


櫂も煌も桜も芹霞もいない。


「先に行かれました。貴方が先程機械に施したものは由香が引き継いで、魔方陣破壊をしようとしています」


「由香ちゃんでは無理だ!!! 彼女が持つパソコンでは、方向誘導すら危うい。下手したら反撃喰らうぞ、秘密暗号(シークレットコード)があれば守られるという類ではないんだ!!!」


僕の叫びに、榊は苦笑する。


「それでも。どうしても皆さんの御役に立ちたいようです。まあ、今の状態では…紫堂の屈強の男達も、あの娘の変化に烈しく揺れている。叱咤しながらでも、前に導けるのは…由香くらいなものでしょう」


僕は舌打ちにして立ち上がる。


身体はだるくて、まだ息は上がるけれど。


だけどあれだけの発作なら、普通のニトロでは抑えきれなかったはずだ。


しかも結界の名残もないのだとしたら。


「僕に飲ませたニトロって…紫堂の研究薬?」


それしか、奇妙な事態を解決出来ない。


「はい。氷皇公認の元、只今紅皇が指揮官として薬開発させているらしいです。普通のニトロよりも何倍も強く、貴方の身体に馴染んで即効性を示すでしょうね。意識失われていられたのは10分弱。なかなかのものですよ」


緋狭さん。


僕はまた貴方に助けられたんですね。


僕はメッセージを受け取りました。



"何度でも立ち向かえ"
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