あひるの仔に天使の羽根を
だとしたら尚更。
「僕は諦めないよ」
何度も何度も諦めようとして、だけど諦めきれなかった大切な女性。
永遠が何だ。
擬態が何だ。
0からまた始めればいいだけだ。
芹霞という存在が此の世にあるのなら、何度でも繰り返しはきく。
"初めまして"だろうと、
"お久しぶり"だろうと。
どんなに発作に苦しんだって、笑いながら言ってやる。
それくらい僕にはお手の物だ。
そうやって僕は生きてきた。
だけど。
"我慢"だけでは終わらせない。
今までのまま、流されるままに生きる気はない。
それは優しさでも何でもなく、僕の弱さであったのだから。
僕は強くなりたいんだ。
強くなった僕を、見て貰いたいんだ。
哀れみなんかじゃなく。
"僕"とこれからを始めて貰いたいんだ。
渡さないよ、あんな男に。
僕は過去など必要ない。
欲しいのは今だから。
僕は――
月長石を握りしめ、階段を駆け下りた。