あひるの仔に天使の羽根を
「此処は天使の飼育場であり…実験場だ。天使の種を確実に増やす為、"統制"されているんだ。普通の人間のようにな。統制方法は、此の地の魔力であり、神父達を動かす人工知能であり…。多分、そうした統制がなされていない昔は、荒れていたのだろうな」
――昔は……生きる為に互いを貪り食っていたらしいですから。
俺になりに、ざわつく単語を繋げて見れば…
「同種喰いとなれば…え? じゃあこいつらは…元天使?」
「ああ。恐らく人工的に"増殖"されたんだろう。そして失敗作は海に流される。それが…此処に来る時に襲われた…奴らだ。まあ…守護者(ガーディアン)として改良はされているだろうがな」
肩の上の芹霞が震えている。
「どうした、芹「お前は知っているんだな?」
俺の言葉に、櫂が被せた。
「知っている?」
しかし何処からも返事はなく。
多分――
13年前の記憶と結びついているのだろう。
櫂は、恐らく13年前に何が起きたのか予測しているんだ。
「紫堂!!! こっちの準備は出来たよ。師匠が来るまで不安だらけで仕方が無いけれど、ボクやるからね」
そう声高に叫んだ遠坂だが、パソコンに手を置いた瞬間、見る見る間にその顔を険しくさせて悲鳴を上げた。
「どうしました、由香さん!!?」
「電力が奪い取られていくんだ。どうしてだ、何故だ? だってこれはレグの力を受けていないはずで…」
「おい、まさか玲が危ねえのか!!?」
一抹の悪い予感を、遠坂は却下した。
「違う。ようやく妨害突破して、電気系統を師匠のメインコンピューター経由して、外部と繋げることが出来たから、今…電力供給という点では師匠の力の支配から抜けている。師匠がどうのは関係ない。ああ!!! このままじゃ、何も出来ないよッッ!!! 何だ? 何が邪魔してるんだ!!?」
その時。
芹霞が、すっと人差し指を地面に向けた。
「鏡…。多分…鏡じゃない?」