あひるの仔に天使の羽根を
誰もが驚いた顔を見せた時、櫂様は不敵に笑っていて。
「生命の樹には、もう1つセフィラがあった。
11番目の隠しセフィラ"ダアト"。意味は知識。そして悟り。神が隠したものを探す、賢者の試練。それは「神の真意」。
その場所は…"深淵(ビュトス)"、反転した今は、空高く聳(そび)えるあの塔だ。さあ振り出しに戻ろ……」
皆を促す櫂様の瞳が、突如揺れた。
視線の先には芹霞さん。
芹霞さんは――
泣いていた。
「……芹霞?」
顔を覗き込んだ玲様に、芹霞さんは手で涙を拭った。
「さあ、戻ろう」
その顔が悲哀に満ちていて。
だけど何も言わさぬその強い眼差しに。
ドド-ン。
私達は、その限られた時間故…走るしかなかった。