あひるの仔に天使の羽根を
僕は認めない。
そんな結果は、受け入れない。
「諦めるな、もっと"僕"の望み通りにしろ。
そう…"僕"を開放しようとしてくれたのは、君なんだよ?」
だけど…
「――玲くん。
あたし…行かないといけないの」
僕に向けられたその瞳は。
「どうしても、行かないといけないの。
久遠の……刹那の処に」
ああ、僕の大好きな…
僕を魅縛して離さない…黒い瞳で。
「ああ――…くそっ!!!」
背を向けていた煌の、苛立ったような舌打ちが聞こえた。
「切っても切ってもキリがねえ!!!
櫂、玲!!! 遠坂連れて芹霞と先に行け!!!
俺と桜で、抑えていてやる!!!
ほら、旭。お前も役に立て!!!」
煌が荒い息をつきながら、拳を地面に叩き付けて外気功を放てば、迫り来る屍は弾かれたように後方に吹っ飛んで。
「如月、君の身体は…」
「うるせえ、黙れ遠坂!!! 俺は大丈夫だ。今やばいのは櫂と玲の方だ。まだ回復出来てねえんだろ?」
射るような褐色の瞳。
見抜かれていたらしい。
僕も櫂も、紫堂の力を使いすぎたんだ。
煌の増幅力によって、必要以上に排出したエネルギーは過去最大で。
予備薬のニトロを飲んでいたのを見られたのかもしれない。