あひるの仔に天使の羽根を
・勝負 櫂Side
櫂Side
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見上げれば――
塔の上部の形状が変化している。
壁に沿うように回り込んだ通路と、まるで飛び込み台のようにせり出て見えるのは
神楽――?
恐らく、この螺旋階段の終点、俺達が行こうとしている場所だろう。
明らかな変化はそれだけではない。
塔の壁色が、次第に変化を見せている。
反転。
まるで犠牲者の血を吸い上げているような、鮮やかな真紅色。
闇色は残虐たる赤色に塗り替えられ、その中に漆黒の線が取り込まれていて。
血の記憶に閉じ込められて、もがいて走る闇。
それはまるで今の俺のようだ。
――あんた随分泣き虫ね。
初めて会った俺に、芹霞は言った。
――あたしが守って上げる。
――あたしね、櫂がだあい好き!!!
――あたし達はね、永遠なの。
永遠。
それは秘密の呪文のようで。
そして解けることなき、絶対的魔法で。
だから疑いもしていなかったんだ。
どうして惰弱な俺に、芹霞がそこまでの愛情を注いでくれるのかを。
母性だと、その一言では説明つかない程、芹霞が"始めから"俺に執着した理由を。
俺はただ恋心だけを増大させて、その"愛"は絶対的だと思ったんだ。
そして8年前。
俺の永遠が目の前で崩れた時、思った。
永遠を呼び寄せてやると。
俺は絶対、芹霞を離しはしないと。
芹霞と共に生きる為なら、何でもしてやる。
それが人の道に外れることであろうと、必ず、完璧に、手に入れてやる。
それが"貪欲"たる俺が目覚めた瞬間だった。
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見上げれば――
塔の上部の形状が変化している。
壁に沿うように回り込んだ通路と、まるで飛び込み台のようにせり出て見えるのは
神楽――?
恐らく、この螺旋階段の終点、俺達が行こうとしている場所だろう。
明らかな変化はそれだけではない。
塔の壁色が、次第に変化を見せている。
反転。
まるで犠牲者の血を吸い上げているような、鮮やかな真紅色。
闇色は残虐たる赤色に塗り替えられ、その中に漆黒の線が取り込まれていて。
血の記憶に閉じ込められて、もがいて走る闇。
それはまるで今の俺のようだ。
――あんた随分泣き虫ね。
初めて会った俺に、芹霞は言った。
――あたしが守って上げる。
――あたしね、櫂がだあい好き!!!
――あたし達はね、永遠なの。
永遠。
それは秘密の呪文のようで。
そして解けることなき、絶対的魔法で。
だから疑いもしていなかったんだ。
どうして惰弱な俺に、芹霞がそこまでの愛情を注いでくれるのかを。
母性だと、その一言では説明つかない程、芹霞が"始めから"俺に執着した理由を。
俺はただ恋心だけを増大させて、その"愛"は絶対的だと思ったんだ。
そして8年前。
俺の永遠が目の前で崩れた時、思った。
永遠を呼び寄せてやると。
俺は絶対、芹霞を離しはしないと。
芹霞と共に生きる為なら、何でもしてやる。
それが人の道に外れることであろうと、必ず、完璧に、手に入れてやる。
それが"貪欲"たる俺が目覚めた瞬間だった。