あひるの仔に天使の羽根を
・記憶
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漆黒と鳶色の…何かを訴えかけるよう瞳が向けられているのが判る。
だけどそれは無視しなきゃ。
薄れる記憶と、蘇る記憶。
どちらが重いものかと問われれば、蘇る記憶のものだろう。
だけどね、だけど。
あたしにとっては、薄れる記憶も大切だったんだ。
本当に本当、楽しいものだったんだよ?
だから。
なかったものにしようと思った。
あたしは、強い人間じゃない。
あたしは、綺麗な人間じゃない。
笑ってバイバイできないから。
櫂みたいに、潔くはないから。
このまま記憶が薄れる様に身を任せようとしていたのに。
実際…彼らに対する"気持ち"が、無くなりかけていたんだ。
立場や肩書き…どうでもいい様な記憶だけが残っていて。
あたしがどんなに皆を大切にしていたか、自分の気持ちがすっと…消えてしまっていたの。
昔の記憶に、上書きされていたの。
そんな時。
由香ちゃん変な紙あたしに見せるんだものね。
忘れていた…だけどあたしの直筆。
思い出しちゃったじゃない。
取り戻しちゃったじゃない。
彼らへの執着。
櫂への執着。
だから、皆を見ないようにしていたの。
だから、皆を拒んでいたの。
だけど――
皆見抜くんだものね。
"フリ"をしていることに。
漆黒と鳶色の…何かを訴えかけるよう瞳が向けられているのが判る。
だけどそれは無視しなきゃ。
薄れる記憶と、蘇る記憶。
どちらが重いものかと問われれば、蘇る記憶のものだろう。
だけどね、だけど。
あたしにとっては、薄れる記憶も大切だったんだ。
本当に本当、楽しいものだったんだよ?
だから。
なかったものにしようと思った。
あたしは、強い人間じゃない。
あたしは、綺麗な人間じゃない。
笑ってバイバイできないから。
櫂みたいに、潔くはないから。
このまま記憶が薄れる様に身を任せようとしていたのに。
実際…彼らに対する"気持ち"が、無くなりかけていたんだ。
立場や肩書き…どうでもいい様な記憶だけが残っていて。
あたしがどんなに皆を大切にしていたか、自分の気持ちがすっと…消えてしまっていたの。
昔の記憶に、上書きされていたの。
そんな時。
由香ちゃん変な紙あたしに見せるんだものね。
忘れていた…だけどあたしの直筆。
思い出しちゃったじゃない。
取り戻しちゃったじゃない。
彼らへの執着。
櫂への執着。
だから、皆を見ないようにしていたの。
だから、皆を拒んでいたの。
だけど――
皆見抜くんだものね。
"フリ"をしていることに。