あひるの仔に天使の羽根を
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目の前に居る久遠は、男とは思えない程美しさ。
澄み切った瑠璃の瞳は、あたしを見ていて。
それは13年前の記憶と何1つ変わらない。
ねえ、久遠。
本当に意識はあるの?
今――
何を考えているの?
「兄君の久遠様、弟君の刹那様。"彼女"の血を引く須臾様が産み落とした双子は、類稀なる力をお持ちでした。次第に力を失う各務家の…それはある種の先祖返り。それは母親の血に連なる"天使"の血の成せる業だったのか…。
私は…巫覡としての双子の教育係でした。彼ら本来の言霊の力に布陣術を組み合わせてその力を拡大させられれば…そんなことが出来る巫覡を祭の中心に据えれば、それだけ"彼女"の蘇生は完全なものとなる。
その為に不必要なものは削ぎ落とし、必要なものは厚くさせて準備をしていたことに気づいた貴女のお姉様は、横槍を入れて邪魔をされた。元々そういうつもりで現れたのかもしれぬが…それより最大の厄介者は貴女だった」
白皇があたしを指をさした。
「双子の力はほぼ同等。しかし久遠様の金緑石は須臾様に奪われた為、その力がある分だけ刹那様の力の方が上回り…それが巫覡の決定要因となった。それは各務家の中では名誉のことのはずですが、祭がある13年ごとは、儀式の意味合いが違いました。神の依代である巫子は…土地に、住人に取り込まれますので」
「取り込まれる?」
鳶色の髪が揺れた。