あひるの仔に天使の羽根を
あたしは、久遠を見た。
少し…瞳が揺れている気がする。
聞こえているんだね。
――うるさいな、せり。オレと刹那の邪魔すんなよ。
口汚い久遠。
物静かな刹那とは反対に、いつも怒ってばかりの久遠。
――あっちいけよ、うるさいんだよ、お前!!!
いつだってあたしを邪魔者扱い。
だけと人一倍優しくて、あたしの涙に弱くて。
――ほら、呼び寄せたから。泣くなって!!!
布陣という魔方陣で、死んだ小鳥を蘇らせたのはびっくりしたけれど。
――お前、刹那にまとわりつくな!!! 離れろ!!!
刹那を大切にしていたお兄さん。
刹那とそっくりな綺麗な顔をしていて、
あたしとはいつも喧嘩していたよね。
――もういい加減、負けを認めろ!!!
小さいあたしに張り合っていたよね。
勝ったと判った時の、あの得意顔。
大人ぶっているくせに、子供じみた処が…あたしは好きで。
それは刹那に対する"好き"ではなかったけれど。
最初に助けてくれたのが刹那ではなく、久遠だったら。
多分――
あたしは久遠が好きになっていたよ。
そして可愛い天使の旭。
皆で居たいな。
ずっとずっと、こんな日が続いて欲しいって思ったんだ。