あひるの仔に天使の羽根を
――何事!?
――やあ、母さん。さようなら。
手を振る刹那が、突如漆黒の光を放ち。
「刹那から放たれた、闇の…黒い炎に包まれ、須臾がどろどろに溶けていったの。その声に駆けつけた給仕達も」
阿鼻叫喚。
灼熱地獄。
その炎は、屋敷まで飛び火して。
避難に家から飛び出た柾も、生きたまま炎に焼かれていく。
――ああ、シキミ?
「名前だけは聞いていた、刹那の腹違いの義妹。病気だって言ってたけど、初めてみた顔は、お婆さんみたいな皺くちゃで」
――悪いけど、オレの永遠の愛はせりのものだから。
一筋の涙。
その憎悪にも似た眼差しをあたしに向け…炎に包まれて。
肉が焼かれる悪臭と
凄まじい悲鳴。
「家が燃えて…あちこちから大勢の声が、悲鳴が!!!」
助けて。
助けて。
燃える。
全てが黒く燃え尽されていく!!!
――もうこれで膿は出たかな?
あたしの目の前で刹那が笑う。
――天使も全てが丸焦げだ。あはははは。
どこまでも悪魔じみた…破滅的な笑みを。
――さあせり、選ぶんだ。どっち?
頭に浮かぶのは、刹那に喰われた旭。
やだやだやだ!!!
あたし…死にたくない!!!