あひるの仔に天使の羽根を
――逃げないでよ?
「がたがた震えながら尚も逃げようとするあたしに。少しだけ、哀しげな顔をした刹那は、何かを唱えた」
途端、あたしの身体は黒い光に包まれて。
螺旋状に身体に纏わり付くそれは、まるで黒蛇の様に。
あたしをぎりぎりと巻き付けて。
――君がオレのものだという刻印をつけて上げる。もう逃げられないように。
「そう…邪痕を…刹那の所有の証を身体に刻まれて」
――早く選んでよ、せり。じゃないと苦しいだけだよ?
「あたしに選択を迫ったの」
――オレ達は永遠だよ? まさかやめたいなんて言わないよね?
あたしはただ恐怖して。
痛みと、苦しさと。
意識は段々と薄れるばかりで。
――早く…さあ!!!
そんな時、現れたのは――
――せり、大丈夫だ!!! もう大丈夫だから!!!
「久遠が、助けに来てくれて」
――いいかせり。抵抗するな。身体がばらばらになる。そう…闇の流れに身を任せて。
あたしを抱きしめてくれた。
――まさか、お前まで邪魔するの!!?
憎しみに燃える刹那の目。
――また、オレを閉じ込めるの?