あひるの仔に天使の羽根を


――逃げないでよ?



「がたがた震えながら尚も逃げようとするあたしに。少しだけ、哀しげな顔をした刹那は、何かを唱えた」



途端、あたしの身体は黒い光に包まれて。


螺旋状に身体に纏わり付くそれは、まるで黒蛇の様に。


あたしをぎりぎりと巻き付けて。


――君がオレのものだという刻印をつけて上げる。もう逃げられないように。


「そう…邪痕を…刹那の所有の証を身体に刻まれて」


――早く選んでよ、せり。じゃないと苦しいだけだよ?


「あたしに選択を迫ったの」


――オレ達は永遠だよ? まさかやめたいなんて言わないよね?


あたしはただ恐怖して。


痛みと、苦しさと。


意識は段々と薄れるばかりで。



――早く…さあ!!!



そんな時、現れたのは――


――せり、大丈夫だ!!! もう大丈夫だから!!!


「久遠が、助けに来てくれて」


――いいかせり。抵抗するな。身体がばらばらになる。そう…闇の流れに身を任せて。


あたしを抱きしめてくれた。



――まさか、お前まで邪魔するの!!?


憎しみに燃える刹那の目。


――また、オレを閉じ込めるの?




< 1,265 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop