あひるの仔に天使の羽根を
 
――無駄だ刹那。オレが死んでもせりの邪痕は…せりがお前以上の"他の"恐怖を感じない限り蘇らない。それも真性の"闇"じゃないとね。金緑石の力は"幻惑"。オレはその力を操れないけれど、金緑石の力をオレの言霊で現実にすることが出来る。これはオレだけが持ち得る術だ。判っているはずだ。


――正気に返れ、刹那!!! お前は狂った"あの女"とは違うんだ!!!



暴走する狂気。


止まらない。



刹那が――壊れていく。



それはまるで封印が解けるように、

刹那の身体から出た、黒い光がうねるように荒れ狂って。



闇の暴走。



あたしの代わりに邪痕を負った久遠は…

自分に"転写"したことにより、体力を消耗していた久遠は…



――もし生まれ変われたら、



あたしを庇うように抱きしめて。



――覚えていてよ、オレのこと。



それは美しく微笑んで。



――もっと大人になったせりを近くで見ていたかったなあ。



両目が潰れているのに、あたしには綺麗な瞳が見えた。



――オレに"永遠"、欲しかったなあ。



それは金緑石の力かも知れないけれど。



「ねえ…本当は、オレが"刹那"って言うんだ。

旭だけそれ知ってたけど…ああ、本当の名前呼んで貰いたかった」



まるで初めて会った時の刹那のように、綺麗に煌めいていて。



――あいつを許してやってくれ。



放たれた黒い光。




――やだやだやだ、久遠!!!





「久遠…いえ"刹那"も!!!


ああ――…


刹那までも死んじゃったああ!!」
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