あひるの仔に天使の羽根を
俺は塔を見上げた。
俺は櫂達に芹霞を託したんだ。
俺は櫂達の背中を守ると約束したんだ。
塔に逃げ込むことは出来るけれど、ここの連中の動きを止めない限り、狭い塔の中での戦闘は生身の人間たる俺達は絶対不利だから。
俺は――
此処を守るのが勤めだ。
桜は攪乱しているらしく、頬を叩いても正気に返らねえ。
桜…どうしちまったんだよ!!?
ありえねえ非常事態に、俺の心が焦る。
どうする?
どうすればいい?
そんな俺達を守るように現れた影。
それは、月(ユエ)並の戦闘力を持った旭。
芹霞に意味ありげな言葉を向け、そして俺の…強制的な言葉に従い…俺達と共に屍の頭を…手にした小さな鎌で落としていたけれど。
頭――
落とせば、屍は生き返らねえのか?
今更…俺達と月の戦闘スタイルの相違に気づいて。
きっと桜なら気づけたものだが…こんな調子ならば、大分前から変調をきたしていたかも知れねえ。
「頭を刈るのは――
身体と思考を支配する…"幻覚"が消滅するからだ。
夢から…覚める」
その声は――
「蓮!!?」
そして――
「何で、何で僕が女の言うことなんか!!!
何で僕があの女に脅されて、教祖を"作って"いた機械を壊す方法を教える羽目になって、何でそれによってこんな大量発生したこいつらの後始末を、僕がしないといけないんだよ!!?」
「司狼!!?」
更には――
「文句をたれるな小童。使い道がある分、殺されないだけマシだと思え」
赤い、赤い――
穢れた血色には決して染まらない
何処までも崇高な気高き赤色。
「緋狭姉!!?」