あひるの仔に天使の羽根を
桜の守護石のような黒い…艶やかな瞳は、俺に向けられた。
「副作用だ。桜の服にある…小瓶の中身を飲ませろ」
「副作用って?」
「早く飲ませろ」
有無を言わせぬその強い響きに、俺はこくんと唾を飲み込みながら…まさぐりあてたポケットから小瓶を見つけ…コルク栓を歯で囓って外すと、戦慄(わなな)く桜の唇に流し込んだ。
暫くすると、咽せ込むようにして桜が身を捩る。
「おい、大丈夫か!!?」
思わず背中をさすれば、桜の目がばっと見開いて。
ある意味、ゾンビめいた脅威の"蘇生"に、俺はたじろいでしまった。
まさか…本当にゾンビ…。
「桜は生者だ、案ずるな馬鹿犬めが」
ああ、安心した。
こいつがゾンビ化したら、凶暴すぎて俺殺されるわ。
「……?」
状況を理解出来ていなかったのか、大きな目が…やや挙動不審げに動き、そして俺の手の中の小瓶と、緋狭姉…そして頭を切り落とす助っ人3人を視界に入れると、事態を把握したようだ。
そして――
「緋狭様!!! 何度も何度も申し訳ございません!!!
ありがとうございます!!!」
ちょっと待て、桜。
「飲ませたのは俺で…」
「桜、行って参ります!!!」
まるで聞いてやしねえ。