あひるの仔に天使の羽根を



――刹那様!!! 



荏原が、荒れ狂う刹那説得じみた言葉を向けていた気はしたけれど。


もうあたしの気力は限界で。


目の前が薄れていった。


「そんな時、緋狭姉の声が聞こえた」



――芹霞!!?


――緋狭様。私には考えが。だからここは妹様を連れて!!!



「そしてあたしは…その後の記憶を一切失った。

ねえ荏原さん…。

貴方は、あの時――

刹那に…何をしたの?」


あたしは何の力も持たない女だけど。


だけど――


「刹那を…何処に入れて閉じ込めたの?」



感じるんだ。


記憶を戻した今だからこそ。


久遠に感じる、懐かしい気配。


忘れられるはずはない…

"愛しさ"と"恐怖"は。


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