あひるの仔に天使の羽根を

緋狭様の声は淡々としていて。


「愛する女に身体を持たせて共に生きようとするのが目的だったはずなのに、白皇もまた…各務に毒され、"永遠"に取り憑かれた。

"永遠"には"選択"出来る意思など必要いらぬ。

人工知能は…その"考える意思"は、全ては白皇の為だけに存在するもの。

だとすれば、未だ尚各務翁を想い続ける"彼女"の意思は必要なく…自分だけを想い続けるプログラムを施行すればよい。"永遠"に……」


もし――

もし私がそんなことが可能であるならば。


「しかし機械と肉体の融合には、白皇の幻術は及ばぬ。久遠の力を持って"現実化"したとて、その所業は神の領域なれば、真実と成すには易しことではあらぬ。だとすれば。久遠の力を超える力…多大な電力と、融合しうる為の生死を司る闇の力、そしてそれらを維持続ける金銭が必要だった。その為の…その融合を物理的に現実にする為の、"約束の地(カナン)"。そこには各務翁も藤姫の思惑も関係ない。あるのはただ純粋な…邪な愛の形」


もし――

芹霞さんの中から、"永遠"の相手を消すことが出来たのなら。

そこに私という存在を入れることが出来るのなら。


私は――。



「んなもの、出来たとしても虚しいだけだろ」



煌が吐き捨てるように言った。


「欲しいのは、自分で作った"想い"かよ。そこに相手の真実の気持ちがなければ、そんなの…俺は満たされねえ」


私は思わず…唇を噛みしめる。


「俺が欲しいのはまやかしじゃねえ。"真実"だ」


そこに煌の強い意志を感じて、一瞬でも誘惑に揺れた私は、その事実に羞じる。


純粋に求められる煌が羨ましい。


そう思う。


「第一その胴体天使も、久遠や刹那を始め、旭達や各務の連中全てひっくるめて、"生きて"るって言えるのか!? 幻術で蘇生させ、それを"現実化"するって言ったって、そんな現実、"生きて"いるって言えるのかよ?」


呆れ果てたような褐色の瞳は、依然真っ直ぐで。
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