あひるの仔に天使の羽根を
「ほう? 無関係と…そう仰いますか。貴女が刹那様を忘れた後、"永遠"を誓われていた方を? また随分と非情な」
ぐさりと心に何かが突き刺さるけれど。
ああ、もう少しだから。
櫂の輪郭よ…
櫂の思い出よ…
薄れていかないで。
――芹霞ちゃあああん!!!
ああ、あたしの中で"誰か"が泣いている。
ごめんね、ごめん。
もう…記憶は薄れているんだ。
凄く心が痛む泣き声だけれど、
あたしは――
見ないふりするから。
「"永遠"は…真実は1つだけしかないの。それ以外は…まやかし。必要ないの」
あたしは真っ直ぐ、櫂を見て言った。
「あたしは此処で、刹那と…久遠と生きるから。
もう櫂とは皆とは……"永遠"に会わない」
そう言ったら――
櫂は眉間に皺を寄せて、
苦しそうに目を瞑って俯いた。
「芹霞!!!」
声を荒げたのは、白皙の青年。
鳶色の瞳と髪を持つ…端麗な顔。
それが苦痛で歪んでいて。
ああ、玲……くん、だよね?
ああ、もう少しだから。
もう少し、あたしの記憶…もっててよ。
あたしが安心して皆を送り届けるのを確認するまで。
そんな玲くんを片手で制したのは櫂で。