あひるの仔に天使の羽根を
無表情の久遠の唇が僅かに動いた気がする。
"さようなら、オレの肉体"
そして久遠は、最後の…"生き神様"を突き飛ばし…
"さようなら、オレの子供"
そう…言った気がした。
そして最後の…各務の血を引く者も消え去った。
「ははは。久遠様。術が解けていましたね。それでも尚も乗って頂けるとは。それでどうします? このまま続行ですか? それともドロップアウト?」
櫂とまだ戦闘中だというのに、白皇は声を張り上げた。
その時久遠は。
本当に綺麗な笑みを僕達に見せて。
「オレは、久遠だ。刹那なんて知らない。
昔から、オレはせりが大嫌いだった。
絡まれるのは、いい迷惑なんだよ!!!」
そして久遠は両手を拡げて――
それはまるで、天使が両翼を拡げたように。
「玲、止めろぉぉぉ!!!!」
凍り付いたような櫂の叫び声と同時に僕は駆ける。
久遠がそのまま、後方に傾いて…神楽から飛び降り、
そして芹霞もまた――
「今までありがとう……」
そう僕に…櫂に向けて微笑み
久遠の後を追ったんだ。
僕の――
目の前で。