あひるの仔に天使の羽根を
 

無表情の久遠の唇が僅かに動いた気がする。



"さようなら、オレの肉体"



そして久遠は、最後の…"生き神様"を突き飛ばし…



"さようなら、オレの子供"



そう…言った気がした。




そして最後の…各務の血を引く者も消え去った。




「ははは。久遠様。術が解けていましたね。それでも尚も乗って頂けるとは。それでどうします? このまま続行ですか? それともドロップアウト?」


櫂とまだ戦闘中だというのに、白皇は声を張り上げた。


その時久遠は。


本当に綺麗な笑みを僕達に見せて。



「オレは、久遠だ。刹那なんて知らない。

昔から、オレはせりが大嫌いだった。

絡まれるのは、いい迷惑なんだよ!!!」



そして久遠は両手を拡げて――

それはまるで、天使が両翼を拡げたように。



「玲、止めろぉぉぉ!!!!」


凍り付いたような櫂の叫び声と同時に僕は駆ける。



久遠がそのまま、後方に傾いて…神楽から飛び降り、



そして芹霞もまた――




「今までありがとう……」




そう僕に…櫂に向けて微笑み



久遠の後を追ったんだ。



僕の――


目の前で。

< 1,299 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop