あひるの仔に天使の羽根を
 

――り。


「また会えて嬉しかったです。

ずっと待ってたんです。

ぼくも――あのヒトも。

例えあなたが忘れていても――」



――せり。



「……え?」



「あのヒトを救ってください。

あのヒトの心は、昔に囚われたまま。

偽りない心で、またあのヒトを

愛してあげてください。

救ってください――


あのヒト……刹那様を」



――約束だよ。


刹那――?


どくん、と心臓が脈打った。


陽斗が……警告を発している。



そして狭くなる隙間から投げられた、一冊の手帳。


「この地についてかかれてあるそうです。

僕は読めなかったけれど、

お役にたてれるかもしれません。


ここを出たらまっすぐです。

惑わされずに進んでください。

強い心があれば、必ず"神格領域(ハリス)"に出ます。


どうか――ご健勝で


どうか――刹那様を」


澄んだ瞳に、動ける者は誰もなく。




< 130 / 1,396 >

この作品をシェア

pagetop