あひるの仔に天使の羽根を
――り。
「また会えて嬉しかったです。
ずっと待ってたんです。
ぼくも――あのヒトも。
例えあなたが忘れていても――」
――せり。
「……え?」
「あのヒトを救ってください。
あのヒトの心は、昔に囚われたまま。
偽りない心で、またあのヒトを
愛してあげてください。
救ってください――
あのヒト……刹那様を」
――約束だよ。
刹那――?
どくん、と心臓が脈打った。
陽斗が……警告を発している。
そして狭くなる隙間から投げられた、一冊の手帳。
「この地についてかかれてあるそうです。
僕は読めなかったけれど、
お役にたてれるかもしれません。
ここを出たらまっすぐです。
惑わされずに進んでください。
強い心があれば、必ず"神格領域(ハリス)"に出ます。
どうか――ご健勝で
どうか――刹那様を」
澄んだ瞳に、動ける者は誰もなく。