あひるの仔に天使の羽根を
・繋綱
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――判った。
櫂は、あたしを置いて皆と共に此処を去る。
櫂は皆を守ってくれる。
櫂はやるといったら完璧にやる男だから。
きっと彼らは生きて此処から出てくれる。
もう13年前みたいな、犠牲にしたくはない。
心残りがなくなり安堵を感じた途端、あたしの意識はまた薄れた。
ぼんやりと、ぼんやりとした意識の中、玲くんが久遠に攻撃しようとして。
壊れそうに張り詰めた玲くんを止めた櫂が、白皇と戦って。
しゃん。
そんな鈴の音が、あたしの意識を更に遠いものにさせた。
まるで夢の中のよう。
誰と誰が何をしているのか、不明瞭な中で見えるのは久遠の姿だけで。
身動ぎ一つしなかった久遠がすくりと立ち上がり、向かったのは神楽の舞台。
ぼんやりとした中、嫌な予感だけがして。
そしてあたしの視界に飛び込んだのは、
――約束だよ、せり。
刹那。
意識のない、刹那の抜け殻。
どうして"生かされて"いたのか判らない。
朽ち果てもせず…ただ老いるのみの彼の肉体は、13年前の面影はなく。
だけど判るんだ。
好きだった人の身体だから。
凄く凄く好きだった人だから。
ようやく会えた。
愛情と罪悪感と恐怖と感動と。
複雑すぎる感情に、あたしは涙して刹那に取り縋った。
刹那からの反応はなく。
そして久遠は――
刹那を塔から突き落とした。
一瞬揺れた紅紫色の瞳。
かつての肉体に宿った意識はそこにあっただろうに。
彼は無情にも切り捨てた。
13年前の繋がりを。
全て、切り捨てたんだ。
だけどね、判ったの。
無表情の彼が、泣いているように見えたから。
――判った。
櫂は、あたしを置いて皆と共に此処を去る。
櫂は皆を守ってくれる。
櫂はやるといったら完璧にやる男だから。
きっと彼らは生きて此処から出てくれる。
もう13年前みたいな、犠牲にしたくはない。
心残りがなくなり安堵を感じた途端、あたしの意識はまた薄れた。
ぼんやりと、ぼんやりとした意識の中、玲くんが久遠に攻撃しようとして。
壊れそうに張り詰めた玲くんを止めた櫂が、白皇と戦って。
しゃん。
そんな鈴の音が、あたしの意識を更に遠いものにさせた。
まるで夢の中のよう。
誰と誰が何をしているのか、不明瞭な中で見えるのは久遠の姿だけで。
身動ぎ一つしなかった久遠がすくりと立ち上がり、向かったのは神楽の舞台。
ぼんやりとした中、嫌な予感だけがして。
そしてあたしの視界に飛び込んだのは、
――約束だよ、せり。
刹那。
意識のない、刹那の抜け殻。
どうして"生かされて"いたのか判らない。
朽ち果てもせず…ただ老いるのみの彼の肉体は、13年前の面影はなく。
だけど判るんだ。
好きだった人の身体だから。
凄く凄く好きだった人だから。
ようやく会えた。
愛情と罪悪感と恐怖と感動と。
複雑すぎる感情に、あたしは涙して刹那に取り縋った。
刹那からの反応はなく。
そして久遠は――
刹那を塔から突き落とした。
一瞬揺れた紅紫色の瞳。
かつての肉体に宿った意識はそこにあっただろうに。
彼は無情にも切り捨てた。
13年前の繋がりを。
全て、切り捨てたんだ。
だけどね、判ったの。
無表情の彼が、泣いているように見えたから。