あひるの仔に天使の羽根を
あまりに悲しげだから、よしよししてあげたいけれど、今おてては働いているから…ごめんね。
「じゃあ"れいくん"だね」
そう言ったら、"れいくん"は何かを我慢するように笑った。
「れいくん。笑い方、気持ち悪いよ?」
そう言ったら、お兄ちゃんは苦しそうな顔をしてすぐに…優しく笑った。
「ははは。目薬はもう嫌だよ?」
目薬? 何でそんなこと言うのかな?
「せりかちゃん、お兄ちゃんと遊ぼう? 戻っておいで?」
お兄ちゃんがあたしをぐっと引き上げる。
だけど、思うようには動かない。
「お兄ちゃん…久遠が重いの?」
久遠は大きいものね。
そんな時、あたしの身体ががくんと沈んで。
きゃあと声を上げた時、あたしの手がぬるぬるした。
「!?」
お兄ちゃんの腕からは、赤い液体が流れてきて。
その色に、真っ赤な薔薇の花を思い浮かべたあたしは、心がきゅうと締め付けられて苦しくなった。
「無理だよ、"玲"。お前は、オレを連れるために…
オレの鎌を背中に…深く受けたんだから」
久遠がよく判らないことを言った。
「それでも、それでも僕は諦めない!!!」
お兄ちゃんはそう叫んで。
だけどぬるぬるとした手がすべり、あたしの身体は落ちていく。
もうほとんど一緒に落ちそうな格好のお兄ちゃん。
凄く凄く辛そうに顔を歪ませて。
駄目だ、このお兄ちゃんにこんな顔をさせちゃ!!!