あひるの仔に天使の羽根を


「煌!!!?」



"かい"が叫ぶと同時、"かい"より大きい腕が伸びてきて、あたしを徐々に上に持ち上げる。


何だか怖いよ、誰だろこの人。


オレンジ色が目にチカチカする。


だけどふわふわとした…毛並みをもった、綺麗な大きいワンコみたいで。


凄く綺麗。


なんかお姉ちゃんの飼ってる大きいワンコにそっくり。


なでなですれば、仲良くなれるのかな?


怖がっちゃ駄目だよね。


だから一生懸命笑ってみたら、子犬みたいな目と、愛くるしい顔つきで笑ってくれた。


怖くなんてない。


凄く凄く…可愛いワンコじゃん。



その時。ずるりと…久遠と繋がる右手が痺れと汗で滑って。


久遠と一緒にあたしまでずり落ちて。


更にはワンコの手まで、ずるりとなった。


「芹霞、耐えろ!!! もうちょいだから!!!」



ワンコはそう言うけれど。


ずりずり、あたし達は下にひっぱられる。


うう…もう駄目。


右手に感覚ない。


だから。


「ワンワン、また今度遊んでね?」


そう笑って、ワンコの手を離そうとしたら、



「……せり…さようなら」




何故か――


久遠がそう言って、あたしの手を離そうとした。



だから――



「駄目!!!」


あたしは、勢いよく橙色のワンコの手を離した。



「馬鹿、何すんだ!!!」



叫び声と同時に離れた手。



その時。



ひゅんと何かが飛んできて。




見れば、糸。



くもの巣のように…前に見た"ハンモック"というようなものに、


あたしも久遠も包まれていて。



そして高く持ち上げられて――




どすん。




塔の上に戻された。


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