あひるの仔に天使の羽根を
 


「痛い、痛い、痛い!!!」


涙が出てくる。



――いい加減、降参しろよ!!!



「どうして俺だけ、動物扱いなんだよ、この阿呆タレ!!!」



ペンペンペンペン!!!



――降参するのはそっちでしょう!!?



「痛いよ、助けてよ、久遠、お兄ちゃん達!!!」


「黙れ!!! いいか、こいつを助けるなよ、絶対助けないでくれよ!!!」



――また煌と喧嘩して、襖を破いたのか!!!



ペンペンペンペン!!!



――お前も煌も尻叩きの刑だ!!!



痛い。


痛い。


痛い。



痛みは身体に走り、頭の中のもやもやを走り抜けた。



――お前達のような悪ガキには


「お前みたいな悪ガキにはな、」


――仕置きが必要だ!!!


「お仕置きが必要なんだよ!!!」



ペンペンペンペン!!!



――ごめんなさあああい!!!



痛い。


痛いんだって。


痛いんだってば!!!



叩かれることに対しての恐怖。


身体に刻み込まれた、何かの記憶。


同時に――

何だろう、怒りがこみ上げて。



手がうずうずする。



何でやられっぱなし?



ワンコなのに。



ワンコのくせに!!!



怒りが稲妻となって、あたしの頭上にドッカーンと落ちた。



「この凶暴ワンコの綱くらい、きっちりつけておきなさいよ!!!

あんたは主人でしょう、櫂!!?」




あたしは身を捻って――





「女の子の尻に何をする、この…


――変態エロ駄犬!!!!」





思い切り、その頬に拳を入れた。
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