あひるの仔に天使の羽根を


粉砕されたマジック硝子。


この部屋に入った時から感じていた多くの視線。



目の前に広がる、真実の室内は――


大小、さまざまな角度に取り付けられた画面と大きな機械。


そしておよそ不釣り合いな…贅を凝らしたくつろぎの空間。


手前に据えられた長テーブルは恐らく…円周状に並べられ、その上には豪華な篭盛りになった果物、菓子、そして――


何かの肉の足。


イタリアの生ハム…豚足を削って食するプロシュートのように、塩漬乾燥でもしているのか…だけどそれは少なくとも俺の知る"家畜"の足ではなく。


言うなれば――


人間の足。



そして。


テーブルに残る、真紅に染まった白い羽と…お上品に口元をナフキンで拭う、世間では地位と名誉がある人間達。



此の世で一番恐ろしいのは、

未知なる存在でも死者でもなく――

欲にぎらついた、俺達と同じ生者…人間だ。


俺達を見る何組もの目には。


当然ながら懺悔や後悔の色はなく、ただただ俺の出方を見極めようと…

そしてこの先の"ゲーム"の行方に…その好奇に目を輝かせていて。



「おい、櫂。何だよ、こいつら…」



煌が声をかけてくる。



「紫堂と共に、"KANAN"の式典に招かれた来賓客だ」


「どういうことだ!?」


「……煌、"ゲーム"なんだよ。僕達は選ばれた…駒だったんだ!!!」


玲が声を上げる。


「あ?」


目を細めた煌に、俺は言った。



「金持ち達の"刺激"を満たす遊興…これこそが"KANAN"開催理由。これこそが"約束の地(カナン)"という名の…真実の"ゲーム"の正体なのさ。

元より俺達は…生命の樹のセフィラ、同時に邪悪な樹のクリファに相当する、主要キャラの1人。

選ばれた10人の…たった1人の生き残りを賭けて、莫大な金が動いている。そうなんだろう?」


すると、白皇はにやりと笑って。


「さすがは紫堂様」


そう言った。

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