あひるの仔に天使の羽根を
「皆様に問う。この…鬼畜な遊興が露呈したというのに、落ち着いていられるのは…バックに元老院がついている安心故のことか」
俺はただただ、参加者の達の顔を眺め見る。
財界政界…各界における急上昇株のやり手の急進派。
彼らの力を合わせれば、日本の中枢機関を覆すことが出来るだろうが、それでも元老院1人の力には勝らない。
「これはこれは紫堂の御曹司。今時"正義"は流行りませんよ?」
俺の声に、1人が反応してくつくつと笑う。
宴の時、積極的に俺に話しかけてきた男だ。
「古来より、金さえあれば何でも買える…これは道理。私達は、金という代価を支払い、正当なる"刺激"と"快楽"を買っているだけ。それに美味なる"永遠"がついてきただけのこと。日々日本の発展に貢献している私達に、それくらいいいじゃありませんか。
元々私達は、今は亡き藤姫の誘いを受けただけで、私達を責めるのは筋違い。元老院と五皇公認の遊興に、御曹司が異議を唱えた処で、何も変わりはしない」
くつくつ、くつくつ。
驕る男の笑いが、俺の神経を逆撫でる。
この参加者達の所業…"約束の地(カナン)"自体野放しになっていたのは、その奇異な現実を考えれば、元老院の存在は無視出来ず。
今後影響力が大きくなりそうな者達に、元老院は"快楽"を餌に"傀儡"化し、盤石な地位を…更に彼らを礎に一層の拡大をも狙ったのか。
しかし今、その保護者たる藤姫は居ない。
五皇の力が元老院同等だと…だから元老院のように無条件で守って貰えると、そんな幻想を抱いている時点で、その目は節穴なのだ。
五皇とて、縛り付けられた主(マスター)が居なくなれば牙を剥く。
表面的事象に囚われて、今見えることが真実だと自惚れた時点で、元老院ぶって調子に乗り過ぎた時点で、お前達の力は底が知れたのだ。
欲に人間を捨て、自らの嗜虐性を正当化しようとするのなら。
辿る行く末など、破滅しかない。
それが判らず虚飾に耽る愚かな奴など、
「紫堂の御曹司こそ、隠されたその力が世間に露呈すれば、命取りと成るのでは? そちらを心配されていた方がよろしいのでは?」
俺の相手にすらならない。