あひるの仔に天使の羽根を

・永遠

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目の前に映る光景が忙しすぎて、

そして目に映る色彩が強すぎて。


強烈な赤色と青色の後は――

冷たい白銀色となった。


真実の"永遠"を求めて、久遠と真紅の塔から飛び出した記憶を最後に、

気づけば、橙色に…尻を叩かれていて。


まるで夢見心地の気分から、痛みと共に現実に引き戻され。


薄れていたはずの記憶が戻っていたのを悟れば、

現実世界への帰還を非常に悔いた。


明瞭な記憶を持つ2つの"永遠"。

あたしという存在を賭けるに価する"永遠"。


また1つを切り捨てるのだと思ったら、

思考が考えることを拒否をした。


記憶が執着なのだとしたら。


ああ――

どうしてあたしは忘れてしまえなかったのか。


あたしは刹那が好きだ。

あたしは久遠が好きだ。


それだけでいいじゃないか。

他はいらないじゃないか。


刹那が周囲を皆殺しにする程、あたしを愛してくれたのなら、

あたしだって刹那を一途に愛し続ければいい。


久遠の時をもって――。


だからひっそりと、放っておいて欲しいのに、

折角櫂が皆を無事に連れて帰れたはずなのに。


生き残りを賭けた"ゲーム"。


馬鹿げた"お家事情"に足止めを喰らった。


例え――

悪魔じみた顔を持つ者達が、"天使"を喰らって"永遠"を手にしていたのだとしても。


このゲームの生存者に"永遠"が約束されていたとしても。


それはあたしの望む"永遠"じゃないことは確かだ。


そしてそんなもの…少なくともあたしのよく知る者達は望んではいない。


では。


あたしが望む"永遠"って何?

刹那が…久遠が望む"永遠"って何?


"永遠"とは一体――?




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