あひるの仔に天使の羽根を
「ほほう。力を吸収する塔において、尚も力を注ぎ込んで戴けるのですか。ははは。とうとう…狂ってしまわれたか」
「狂人に狂ったと思われたということは、正常だと言われたと捉えるとする。お前はな、私達の力を甘く見ているのだ」
緋狭姉が白皇の笑いを、更なる余裕の笑いで弾き飛ばせば。
「ニトリクスの鏡は最強。衛星のレーザーも使えぬ状況で、破壊出来る術はありませぬぞ?」
「シロ。お前は"矛盾"の語源をしっておるか?」
「は?」
目を細める白皇に、櫂の端正な顔が不敵な笑いを作る。
「最強の盾に最強の矛。
限界突破した時…壊れるのはどちらだ?」
そして――
「全員、まだ鏡化しておらぬ天井に向けて力を放出せよ!!!」
緋狭姉のかけ声に合せて、部屋の中が明るくなった。
緋狭姉からは赤い光。
蒼生ちゃんからは薄青い光。
櫂からは黒い光。
玲くんからは紫がかった青い光。
煌からは、赤く…いや、金色に輝く――
「鳥!!?」
それは泣きたくなるくらい綺麗な鳥で。
両翼を拡げて、部屋を旋回しながら、天井に…壁に、まだ真紅の痕跡残る壁目がけて長い炎を吐いた。
凄まじい…人智を超える力の放出。
あたしは――腰が砕けて座り込んだ。
「力を注いでも鏡化が早まるだけだ。何故それが判らぬのか。ほほほ。五皇いえども、力を大放出している無防備なそのお姿。私も傍観してばかりは暇でしてな…戴きますぞ?」
不穏な笑い声。
「白皇、僭越ながら…『漆黒の鬼雷』がお相手仕(つかまつ)ります」
糸が――
白皇の動きを執拗に追いかけた。