あひるの仔に天使の羽根を
久遠は――
そんな彼らを、じっと見つめていて。
こんなに凄まじい力を受けているというのに、鏡の壁に変化はなく。
逆に…力が向けられている天井の鏡化速度が速くなっている気がして。
緋狭姉が何を企んでいるのかは判らないけれど、このままではただの力の無駄遣いで終わってしまう。
「ひ、緋狭姉……」
あたしが赤い外套の後ろ姿に手を伸ばした時、
「やめろ、やめろ!!!
これ以上の力は必要ない!!!」
桜ちゃんの攻撃をかわしながら、
白皇が慌てた声を出した。
「多すぎる、予想以上に多すぎる。
このままでは…抑えきれないニトリクスの鏡は……」
ぱらぱらと、天井から何かが落ちてくる。
それは……剥離された白銀色の欠片。
きらきら、きらきら。
光り輝いて、落ちてくる。
そして――
「アカ!!!」
蒼生ちゃんの叫び声と共に、緋狭姉と蒼生ちゃんが高く舞い、
――ドッカーン!!!
下から足を突き上げるような格好で、剥げかけた銀の天井に蹴りを入れて。
白皇が。
最強の鏡だと言ったその天井は。
――バリーーーン。
まるで硝子のような、見事なまでの"脆さ"を見せて。
――否。
やはり凄い堅固な…頑丈すぎる鏡なんだろうけれど。
蒼生ちゃんと緋狭姉の足の衝撃は、一般人の想像を遙かに超えたものだったらしく…それが証拠に鏡の内部の壁まで貫かれ――
―――ガラガラガラ!!!
天井が――
抜けた。