あひるの仔に天使の羽根を
 
無関係なあたしでさえ、"彼女"を欲したんだ。


異性として"彼女"に愛を感じたら、男という存在は、何処まで"彼女"を渇望するのだろう。


愛は狂気というけれど。


ここまで狂って貰えるのなら、女冥利に尽きる気がする。


ある意味、白皇は刹那なのだ。


刹那があたしに向けているものは、あたしが刹那に抱いていた"恋愛感情"ではなく、ただの執着だったのかも知れないけれど。


それでも。


"永遠"


そこまで必要としてくれたことを嬉しいと思う…そんなあたしがいることも確かだ。



ふと感じる視線。



櫂は――

何を考えているんだろうか。



そしてあたしは今、何を考えた?



もしも櫂が白皇のように、…刹那のように、あたしだけを――



駄目。考えてはいけない。


あたしは。


櫂を望んではいけない。


憂いの含んだ切れ長の目。


もう目を合わせてはいけない。

もう合わせられないんだ。


必要ないと、切り捨てたのはあたしだから。

そして櫂はそれを了承したのだから。


無視しようとしても無視出来ない、漆黒色は強烈で。

それでも顔を背け続けるあたしに。


それが僅かに曇って、哀しげに揺らいだ気がした。

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