あひるの仔に天使の羽根を
玲くんから、青光が消える。
多分玲くんは――
単純に、力の吸収だけを狙っている訳じゃない。
何かを感じ取っているんだ。
何かを読み取っているんだ。
流れ出した電気の中から、あたしには解読できない"何か"を。
玲くんは、石を握りしめ…その手を奥の、多くの画面を管理している機械に向けると、やがて電源がつき…色取り取りにボタンが発光した。
画面に映るのは、"約束の地(カナン)"でもう見慣れた場所。
あたし達は、面白可笑しく…此処で監視されていたのだろう。
時に危険な目にあって倒れた時も。
賭け金故に盛り上がっただろう人間達を想像すれば、怒りがふつふつと湧いてくる。
あたし達の真剣さも、生を願う祈りも。
笑い飛ばされたのだと思えば…腹立たしくて仕方が無い。
「ねえ。白皇も機械の従事者ならば、あの家で自己増殖して拡がりすぎた人工知能の処理能力…概算でも予想つくよね?」
白皇は眼を細めて、玲くんの言葉の続きを促した。
「バックアップとはいえ、あれだけの人工知能が今、どうして動き出す気配をみせないんだろう。動きが…遅すぎると思わない?」
玲くんの声には…玩弄の色が見え隠れしている。
「――…え?」
「"コード変換"出来ない貴方には理解出来ないかも知れないけれど、電気は、電脳世界において0と1で構成されている。そのルールを無視して、それ以外の数字で私欲による"創造"と"統制"を試みた時点で、電脳世界から罪人の烙印を押されたんだよ。甘く…見過ぎていたね、たかが機械と」
それは優しげな口調だったけれど。
「!!! まさか!!!
バックアップは完全だ!!!
それにお前には、あれを書き換える力などなかったはずだ!!!」
ふふふふ。玲くんが微笑んだ。
「誰が、僕だと言った?
だから、居ないでしょう?
――由香ちゃんが」