あひるの仔に天使の羽根を
それを"狂い"というのなら。
12年前。
――あたしね、"かんざきせりか"って言うの!!
芹霞と出会ったあの瞬間から、俺は狂い続けてきたんだ。
もう――いいだろう、白皇。
想いは、このままで。
これ以上の"真実"は、"愛情"を傷つける。
美しい、何処までも永遠の"彼女"が傍にいるのなら。
それだけで、お前は満足していろよ。
だけど。
――ガッシャーーン。
白皇が水槽を破壊して。
俺の願いは届かなかった。
中から――"彼女"を取り出した白皇。
「馬鹿だね、シロ。自らが設計した…"彼女"の世界を壊すなんてさ。"彼女"を"生かす"装置がなくて、どう"永遠"を生きるというのさ」
面白くて仕方ないというように。
氷皇の笑いが響き渡る。
しかしそんな笑い声を完全に弾いて、白皇は――
愛しそうに目を細め…"彼女"の頬に口付ける。
美しい、美しい"彼女"。
芹霞さえも惹きつけたその存在。
「BRVK AThH IHVH ALHI…」
白皇が空中に五芒星を描く。
五芒星は白く光って拡張し…"彼女"を包み込んで。
「へえ…蠱毒の力を無視して、あくまで自分の独壇場にて、"永遠"を植え付けるんだ。いいね、その傲慢な必死さが、溜まらなく愛しいよ、シロ!!!」
「ATH MLKVTh VGBVRH VGDVLH LOVLM AMN」
白皇が胸元で逆十字を切った途端、瘴気が生じた。
その瘴気は――魔方陣から漂っていたのと同じもので。
「シロ!! 人は神にはなれぬ!!! それはあくまでお前の"幻術"だと、何故判らぬ!!!」
それは闇であって闇には非ず。
対極に位置する光のようで、光にも非ず。
何だ。
何処からだ。
白皇に呼応するような、増幅的な…何かがある。
放られた、金色の簪(かんざし)。
床に…傷つけられた図象。
近くに佇む――各務久遠。
こいつか!!!