あひるの仔に天使の羽根を
「ははは。心などいらぬ。永遠の身体があれさえすれば!!! さあ久遠。お前の"言霊"で私の術を現実にするのだ!!! さあ!!!」
紅紫色の瞳。
そこに映っている情を読むことは出来ないけれど。
少なくとも。
白皇の力を増幅しているのは、久遠の仕掛けた布陣術に違いなく。
そして久遠は、"彼女"を抱く白皇に向けて――
「布瑠部由良由良止布瑠部…」
言霊を…発した。
空気が…神気を含んで震動し、反響する。
すれば静寂(しじま)に拡がる水紋のように。
瘴気を包み伸ばして力として、更に拡がって。
突如"彼女"が発光した。
そしてその光の中で――
"彼女"は新たな姿に生まれ変わる。
否。
"これ"こそが、彼女の"真実"の姿だったのか。
それは――
「ああ、四肢が戻った。
ああ、"彼女"の身体が完全に…
ああ!!! 永遠なるアダムカダモンに!!!
これで私の…私だけの!!!」
――え!?
「もう――
見苦しいだけだよ、爺」
久遠が…歩み出た。