あひるの仔に天使の羽根を
「お前の"夢"は醒めたんだ」
「何を!!? この奇跡を目にしながら!!!」
「……。お前以外は…オレの術が効いているようだ。お前以外はもう――気づいている。皮肉なもんだよな、お前が教えてくれた術が…引導を渡すなんて」
「……え?」
「 ひふみよいむなやここのたり、ふるべ、ゆらゆらとふるべ。
――あるべき時の姿に…戻せよ!!!」
久遠は――
依然、無表情のままで凛と言い放つと、空気が震えた。
「よく見てみなよ、爺。お前の手の中に居るのは、本当に"美しい"?」
白皇は…久遠の言葉に導かれるようにして、"彼女"を見る。
美しい、美しい"彼女"。
白皇だけが――
美しいと思い込んでいる、腐った…肉の塊を。
白皇が"アダムカダモン"と呼んだ、
完璧な肉体を得たと喜んだ――
それは動くことも出来ぬ、とうに朽ち果てた骸。
"天使"に永遠性など元よりなかったのか、
それとも"天使"でさえ、永遠は叶わぬのか。
その姿は…ただの、醜悪な屍にしか過ぎない。
それこそが…"彼女"の真実。
美しさなど所詮はまやかしで。
それに振り回され狂わされた人間は、何て儚い、夢幻の存在なのか。