あひるの仔に天使の羽根を
しかし――
「私が、私が!!! "永遠"を待ち続ける久遠に、刹那に、他の者に!!! "永遠"なる幸福を与えたというのに!! 何が不満だ!!!? 私の善行を詰られる謂れはない!!!」
「それは偽善だよ」
玲が言った。
「偽りの…真似事の"幸福"、誰が喜ぶと思う?」
「ほざけ!!!!
お前に何が判る!!!」
白皇の笑い。
どこまでも狂った笑い。
自らを神だと豪語しているような、奢れる者特有の笑いにも似て。
ああ――
狂気は"真実"を判断できないのか。
「……爺。本当は言わないつもりだったけれど」
久遠が口を開いた。
「爺の娘は…死んでいなかったんだよ?」
娘――
ああ、藤姫と各務翁が喰らったという、"シキミ"か?
それにより、白皇の精神は…おかしくなったのかもしれない。
「何を!!! 私の目の前で!! 私の子供を喰らったんだ、あいつらは!!!」
「なあシロ」
それは愉快でたまらないと言うように、氷皇が声をかける。
「我が子を、己の欲の糧にする為に"実験"に回し続けた藤姫が。何よりお前を取り込もうとしていた藤姫が。そう簡単に、切り札を手放すと思うか?」
くつくつ、くつくつ。
きっと――
氷皇には判っていたのだろう。
一時でも、藤姫に仕えていたならば、藤姫が戯れで語ったのかもしれない。
「あいつらが喰ったのは、お前の子供ではない。本物は、密かに各務翁が連れ帰った。娘が忘れたのは父親たるお前のことだけ。後は、お前の思惑通り…狂いまくったみたいだがな。
お前は…藤姫を利用しようとして利用されていたのに気づかなかったばかりか、策に溺れて娘まで利用して殺したんだ。
――"須臾"をな」